プロダクトデザイン
本来、漆工芸(蒔絵)は武家社会で高いレベルの素材、道具、技術、教養そして、豊かな感性が複雑に絡み合って
育まれてきた伝統文化です。最高級品でした。だからこそ18~19世紀に貴族の間でも理解され、賞賛され、受け入れられました。
にもかかわらず戦後は残念ながら作り手の側に、大量生産、大量消費へと質より量の考え方が定着してしまいました。
志の高い人々が片隅に追いやられ、人々は薄利多売に走る。注文主からも、
日本では「高価な物は造っても売れない。」
「庶民感覚がよい。」として質の高いものではなく手っ取り早く、安価にできるものが望まれました。
日本の産業は、これまでいかに低コストで早く量産できるかと走り続けてきましたが、そろそろその考えとは決別すべき時です。
日本の市場においてもやっと高級品を求める人が徐々に増えてきましたが世界市場では漆商品に関しては明治以降、
常に高級品が求められてきました。
世界中がフラット化現象で、いろいろな商品が平均化する今日だからこそ、何か特徴のある商品作りを目指すべきです。
たとえば海外から、「日本に行ったら、これは買いたい。」と思ってもらえる商品を作らなければならない。
どの国にもまねの出来ない、日本でしか出来ないもの・・それは、必然的に漆です。
特に日本にしかない漆の蒔絵の技術は他の産業界、時計、家具,照明のメーカーなどとのコラボレーションにより、
商品作りには無尽蔵の可能性があります。
私の考える商品作りの条件と可能性としては、
・高級品であること
・完成度が高いこと。
・オリジナルであること。
・日本の文化の香りがすること。
・ヨーロッパの高級ブランドに勝るとも劣らない品質であること。 等が挙げられると思います。
1976年にウィーンのLOBMEYER社の依頼でクリスタルグラスへの蒔絵を試作を行った事,
同年スイスのCARN D'ACHE社からライターに使う金属への漆塗装法についての相談を受けたことなどがきっかけとなり、
色々なケースに対応できるよう木胎、乾漆、陶器のみならず、ガラス、金属、石、皮、などへの加飾、漆塗装技術の研究にも
力を注いできました。
また、海外に向けての商品の発信ということになれば、作った商品のメンテナンスも考えなければいけません。
作りっぱなし、売りっぱなしではなく年を経ても、修復してもらえる安心があってこそ、高級品を購入してもらえると思います。